ピアニストは孤高の存在だ。

ステージに立てば、ピアノに、音楽に、独りで向かう。

どんなにライトで照らされても。

どんなに華やかなドレスを纏っていても。

 

私の親友は酒豪で、面食いで、ピアニストだ。

 

演奏会前日に練習を聞かせてもらい、彼女の音色のあまりの力強さに、繊細さに、美しさに、涙した。 

ピアノという楽器の底力を思い知らされる素晴らしい演奏だった。

 

音と音が重なり、うねり、大きな波動となる。

 

それはとてつもない集中力のもとに生まれ、それはえげつない練習のもとに起こる。 

 

そして孤独な長き奮闘は、あたたかな拍手で讃えられる。

 

 

 

彼女の演奏会は必ずモーツァルトの『きらきら星変奏曲』で始まる。

副題は『ねぇお母さんきいて』

ピアノを愛した母を幼い頃に亡くした彼女がこの曲に馳せたものを思う。