おやすみ

つい、「ここに愛はありますか?」と尋ねてしまった。

もうこれ以上、自身や彼を誤魔化して継続することに意味を感じられなかった。

 

夕暮れや年の瀬が苦手な、何かを終わらせるのがとても苦手な彼に別れを決めさせた。

それは私の優しさでもあり、私のエゴそのものでもあった。

 

状況を整えなかったのは彼で。

それほどの女でなかったのは私で。

悲しいけれど終わりにしよう。

 

おやすみ。あんまり泣いたらだめだよ。

 

月がきれい

I love you.

月がきれいですね」と訳したのは夏目漱石

「私、死んでもいいわ」と訳したのは二葉亭四迷

「もうあとには戻れないな」と訳したのは東京スカパラダイスオーケストラ谷中敦

 

今宵、中秋の名月

月がきれいですね」

 

ふふふ。

私、満月がまんまるに見えないけど。

ちょっと足りない気がするのは満たされてないからなの、か、な。

ベッカム

彼が無邪気に語りかけてくる。

「子どもの名前は何がいい?」

「子どもは何人ほしい?」

ベッカムっていう名前の犬が飼いたい」

胸の奥がきゅうっとなる。

先の話があるとうれしい反面、
この先、いつまで一緒にいられるのかと
不安にもなる。

 

彼は若い。

その時が来たら、
わたしを選ばないかもしれない。

ベッカムっていう名前は
正直、どうかと思うけど、
そんな先があってもいい。