鉄
鉄の女と名高い友人に恋人ができた。
生まれて初めての恋人。
恋愛は人を受け容れることだったね。
媚
愛想笑いはしたくない。
高笑いはしたい。
誘い笑いはしたくない。
ごまかし笑いもしたくない。
私は私のなんやわからんルールで笑いたい。
拍手に値しない時は拍手しない。
のれない曲で揺れたりもしない。
私は媚びない。
蛸
寂しいと言える贅沢
死にたいと言える幸福
捨
どうせ好かれもしないなら嫌われたって構わないと言いながら、それでも何とか好かれたりはしないものかと一縷の望みを捨てきれない諦めの悪い私。
置
私は箸置きマニアだ。
そして、陶器に目がない。
ある時、ひょんなことから箸置きを知人にプレゼントすることになった。
プレゼントを贈ることは好きだ。
相手が自分では選びそうに無い、でも相手好みを考慮しつつ私にしか贈れない絶妙なラインの物を選ぶ。
相手のことを考え、自分のセンスと練り合わせる。
というわけで、作家市を見に行った時に、吟味し、大変わたし好みなものを購入した。
馴染みの作家の作った可笑しい制作エピソードを踏まえ、選んだ。
箸置き界においてのそこそこの斬新さと贈り物としてのセンスとバランスを持ち合わせていたと思う。
だが、今回は贈る相手が強者過ぎた。
私は、本当にこの箸置きで良いのか。
この箸置きをあの猛者に渡せるのか、あの猛者がこれを気に入るのかと決めかねて、もう一組、普段使いに最適な美しい飴色の箸置きを選んだ。
本来、箸置きなんてひとつあれば良い。
贈り物をもらう側にとっては選択しきれなかった二品は不要だ。
あろうことか、私はその二品を猛者に渡すことにした。
やれやれ。
猛者の本心は計り知れないが、私は今回決めたことがある。
贈り物選びにおいて、置きにいってはならない、箸置きだけに。お後がよろしいようで、オホホホホ
抜
「力を抜いてくださいね」
それができれば
もっと楽に生きられたはず
天井を見つめた
F
「私が好きな人間は、私のことなんか好きにならない」
私になんて見向きもしない人だからこそ、魅かれるのだと思う。
そして何度も何度も思う。
あなたが好きな人を呼ぶ声で私も名前を呼ばれたい。
そんなことを思い出させてくる夜。
そんなことを誘発する小説。